マクロレンズを使うと目では見えないマクロの世界を写すことができます。
しかしマクロ撮影をするには、通常撮影では使われない知識が必要になります。
このページではマクロレンズを初めて使う方に、使い方と用語を解説しています。
ノーノちゃん
コヤくん
このページの目次
1. マクロレンズの特徴
マクロレンズは被写体に近づいて、大きく写すことができるレンズになります。
一般的なレンズの場合、被写体にあまり接近するとピントが合わなくなるため、大きく写したい場合でもこのくらいの大きさでしか写りません。
しかし、マクロレンズだとここまで大きく写すことができます。
マクロレンズは一般的なレンズとどこが違うのか、メリットとデメリットをまとめてみました。
- 被写体を非常に大きく写せる
- ボケが大きい写真になる
- 通常の単焦点レンズとしても使える
マクロレンズは接近してもピントが合うようにできているので、被写体を大きく写すことができます。
接近することでボケ量は自然に大きくなり、簡単に雰囲気のあるボケ写真を撮ることができます。
またマクロレンズは接写できる(被写体に寄れる)特徴がありますが、通常のレンズと同じように遠くにもピントが合うので、通常の単焦点レンズのように風景やポートレート撮影にも使うことができます。
- AF速度が遅い
マクロレンズはAF速度が遅くなる特徴があります。
一般的な通常レンズよりもフォーカス範囲が広いため、動作に時間がかかる傾向があります。
(ただインナーフォーカス式のマクロレンズであればAFは速くなります。)
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2. 最大撮影倍率
最大撮影倍率とは、「どのくらい大きく写せるか」を表した数値になります。
一般的なレンズの場合、最大撮影倍率は「0.1倍~0.3倍」程度となっていますが、マクロレンズの場合は「0.5倍~1.0倍」になります。
10円玉を例に、最大撮影倍率の違いを比較してみます。
一般のレンズ
最大撮影倍率0.2倍だと10円玉はかなり小さいですが、一般のレンズでは大きく写そうとしてもこのくらいの大きさで写ることになります。
マクロレンズ
マクロレンズは被写体に接近できる距離(最短撮影距離)が短いため、大きく写すことができます。
最大撮影倍率1.0倍というのは、実際の大きさがそのままイメージセンサーに写ることになるため、「1倍」という数字になっています。
最大撮影倍率0.5倍は「1:2」と表記されたり、「ハーフマクロ」と呼ばれることがあります。
小さいセンサーは大きく写る
同じ最大撮影倍率1倍のマクロレンズを使っても、フルサイズとAPS-Cなどそれ以外の小さいサイズのイメージセンサーでは写る大きさに違いがあります。
フルサイズの場合
10円玉の横幅は「23.5mm」です。対して、フルサイズセンサーは「36mm×24mm」になります。
上でご紹介したように、フルサイズで1倍撮影をするとこの大きさで写ります。10円玉の方が横幅が短いので、写真の左右にスペースがあります。
APS-Cの場合
10円玉の横幅は「23.5mm」、APS-Cセンサーの横幅も多くの機種が「23.5mm」となっています。(キヤノンAPS-Cは22.5mm程度)
APS-Cセンサーの横幅は10円玉と同じなので、1倍で写すと写真の横幅いっぱいに10円玉が入ります。
APS-Cはフルサイズよりも狭いエリアを切り取るため、写る範囲もフルサイズより大きくなります。
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■APS-C機のマクロレンズで撮影した作例
3. 最短撮影距離
最短撮影距離とは、「被写体にピントが合う最短の距離」をいいます。
正確には、カメラのイメージセンサーの位置から被写体までの距離になります。
イメージセンサーの位置は、ボディの上面にある「撮像素子マーク」で確認できます。
一般的なレンズ
一般的なレンズの場合、最短撮影距離は標準レンズで30cm~50cm、望遠レンズで1m程度になります。
例えば、ニコン「AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G」(最短撮影距離30cm)のレンズで最も被写体に近づくと、このような位置になります。
撮像素子マークから約30cmの位置で、ギリギリピントが合っています。
もし、このレンズで30cm以下に距離を詰めるとピンぼけになってしまいます。
この例では最短撮影距離30cmでしたが、フルサイズ用レンズでは最短撮影距離50cm程度のレンズが多く、その場合被写体としっかり距離を空けないとピントが合わなくなってしまいます。
マクロレンズ(換算60mm)
次はマクロレンズの場合です。
35mm換算で60mmとなるニコン「AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G」で最も近づいてみます。
このレンズの最短撮影距離は0.163mになります。
仕様の通りに、約16cmの位置までピントを合わせることができました。
このような焦点距離が短いマクロレンズは、レンズ先端から被写体までの距離が非常に短くなります。
カメラの影が写真に写り込んだり、レンズが被写体に接触する場合があるので注意が必要です。
マクロレンズ(換算90mm)
次は、35mm換算で90mmとなるタムロン「SP AF60mm F/2 Di II LD [IF] MACRO 1:1」で最も近づいた場合です。
このレンズの最短撮影距離は0.23mになります。
実際の例でも約23cmの位置までピントを合わせることができました。
同じマクロレンズでも、焦点距離が長いと極端に接近しなくてよいので撮影しやすくなります。
このようにマクロレンズは最短撮影距離が非常に短く、被写体に寄れる特徴があります。
ノーノちゃん
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4. 焦点距離の違い
マクロレンズは、大きく分けてこのような焦点距離が用意されています。
- 焦点距離50mm前後の「標準マクロ」
- 焦点距離100mm前後の「中望遠マクロ」
- 焦点距離200mm前後の「望遠マクロ」
それぞれのマクロレンズで最も近づいて撮影する場合、このようなイメージになります。
焦点距離は異なりますが、どのレンズも最大撮影倍率1.0倍であれば、最も接近した場合の写る大きさは同じになります。
ただそれぞれで最短撮影距離が異なるため、被写体との距離が変わってきます。
例えば接近できない位置にある花や、距離を空けたい昆虫撮影では焦点距離が長いマクロレンズの方が使いやすくなります。
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5. 実効F値とは
マクロ撮影を勉強していると、「実効F値」という用語が出てきます。
ここではこの実効F値について解説してみます。
各社のマクロレンズの共通仕様として、マクロ撮影時はカメラに入る光量が弱くなる特徴があります。
そして、ニコンの場合は露出倍数込みの「実効F値表示方式」を採用していて、撮影者が設定したF値がF2.8であっても、減少した光量を加味して表示のF値をF4やF5.6などに大きくして表示します。
初めてニコンのマクロレンズを使用した方は、被写体に近づくにつれて設定したF値が大きくなることに驚かれると思いますが、これは故障ではなくそのように変化する仕様となっています。
一方ニコン以外の各社は「公称F値表示方式」を採用していて、マクロ撮影時でも設定したF値をそのまま表示します。
いずれにしても、マクロ撮影時はカメラに入る光量が減少するので、カメラは光量を増やすためシャッタースピードを遅くしたりISO感度を上げる動作になることはマクロレンズで共通の仕様になっています。
ただ表示されるF値が、ニコンと各社で違いがあるということになります。
ノーノちゃん
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6. マクロ撮影のテクニック
ここではマクロ撮影の4つのテクニックをご紹介します。
初心者の方にとって、マクロ撮影はピントが合わせにくく難易度の高い撮影になります。
マクロ撮影の基本を知っておくと失敗写真を減らすことができるので、参考にしてみてください。
- MF(マニュアルフォーカス)を使う
- 三脚を使う
- 連写を活用する
- 絞りを調整する
①MF(マニュアルフォーカス)を使う
マクロ撮影ではAF(オートフォーカス)だとピントが合いにくくなるので、MF(マニュアルフォーカス)がおすすめです。
MFモードでフォーカスリングを回すと、薄いピント範囲を精密に調整をすることができます。
また屋外では風が吹いて被写体が動いてしまうことがあるので、その場合でも一度MFでフォーカスを決めてから、カメラの位置を微調整してピント合わせをすることができます。
②三脚を使う
マクロ撮影ではわずかなブレでも写真では大きくブレることになります。そのため三脚で固定する撮影方法が基本になります。
ただ三脚を使うと構図の自由度がなくなり、また風の揺れには三脚でも対応できないので、手持ち撮影を重視する人もいます。
ただ焦点距離100mm以上の重い望遠マクロレンズの場合は三脚があると便利ですし、室内や暗い環境でマクロ撮影を行う場合は必ず三脚を用意しましょう。
③連写を活用する
屋外では被写体が常に風で揺れている場面があります。例えば花は完全な無風でない限りわずかに揺れていて、マクロ撮影にとってはピントを合わせるのが難しくなります。
この場合は1ショットで撮影することは困難なので、連写を活用してピントが合った1枚を残す方法が便利です。
MFである程度合わせたら、あとは構図を決めて連写撮影を行います。
④絞りを調整する
被写体に最も接近してF値をF2.8など開放にすると、ボケ量は最も大きくなりますがピント面は非常に浅くなります。
ピント面が浅いと狙った位置で止めるのが難しくなるので、F5.6などに絞ってピント面を広げると撮影しやすくなります。
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7. クローズアップレンズとは
マクロレンズの替わりに、クローズアップレンズを使ったマクロ撮影を行う方法もあります。
クローズアップレンズは薄い虫眼鏡のようなレンズで、マクロレンズでない通常のレンズに装着することでマクロ撮影ができるようになります。
画像出典:ケンコー・トキナー
クローズアップレンズの特徴はこのようになります。
- 3,000円~5,000円程度で購入できる
- 通常のレンズでマクロ撮影ができるようになる
- ピントが合う位置が決まっている(装着中は風景などは撮れない)
- 口径が異なるレンズには付けられない
- 安価なクローズアップレンズだと画質が悪くなる
クローズアップレンズはマクロレンズとは使い勝手が異なっていて、装着中は被写体に近づいたある範囲の距離でしかピントが合わなくなります。そのためマクロ撮影専用として使用します。
「マクロレンズを買っても使うかわからない」とか、「マクロ撮影を手軽に始めてみたい」という方にはクローズアップレンズはおすすめです。
拡大率ごとにナンバリングで分けられているので、詳しくはケンコー・トキナーのHPで選び方が解説されています。
クローズアップレンズの作例
オリンパスの単焦点レンズM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8に、ケンコー・トキナーACクローズアップレンズ NO.2をつけて撮影した写真になります。
NO.2なので拡大率はそれほど大きくありませんが、単焦点レンズを使っていることもあり、この鑑賞サイズでは画質は十分かと思います。
ノーノちゃん
コヤくん
8. マクロ撮影の作例
マクロレンズがあると、花や水玉、昆虫などの撮影が楽しめます。
マクロレンズは最短撮影距離が短く「被写体に寄れる」ため、物撮り(ブツ撮り)にも適しています。
雑貨や料理、ジュエリーなど、商品撮影用途としても活用されています。
9. マクロレンズについてのまとめ
マクロレンズを1本持っていると、写真の幅が大きく広がります。
一般的なレンズと違ってマクロ撮影の専門用語を覚える必要がありますが、「最大撮影倍率」と「最短撮影距離」の2つを覚えるだけなので、初めての方もぜひチャレンジしてみてください。
- マクロレンズは簡単に大きく写してぼかすことができる
- 本格的なマクロ撮影なら最大撮影倍率は1倍のレンズがおすすめ
- マクロレンズは最短撮影距離が短い
- マクロレンズは焦点距離によって被写体までの距離が異なる
- 撮影はマニュアルフォーカスを使う
- 風がある場合は連写を使っていい1枚を狙う
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