被写界深度は難しいカメラ用語ですが、覚えることでボケをコントロールできたり、写真全体をシャープに写すことができます。
このページではイラストを用いてピントが合う範囲をご紹介しています。
ノーノちゃん
コヤくん
このページの目次
1. 被写界深度とは
被写界深度とは、「ピントが合っているように見える奥行き範囲」をいいます。
ピントを合わせた位置はもちろんですが、その前後のピントが合っている(ように見える)奥行きを被写界深度といいます。
以下の図では被写界深度の部分を水色で表示しています。横から見た場合と上から見た図になります。
被写界深度以外の前後は、離れるに従って少しづつボケるようになります。
ピントが合う奥行き範囲が広いことを「被写界深度が深い」、奥行き範囲が狭いことを「被写界深度が浅い」といいます。
2. 被写界深度が決まる要素
被写界深度の深さは、カメラの設定や被写体との距離など様々な要素で決まります。
- F値(絞り値)
- ピント位置まで距離
- レンズの焦点距離
それぞれについて解説していきます。
①F値
F値(絞り値)の数値によって被写界深度が変化します。
- F値が小さい → 深度が浅くなる
- F値が大きい → 深度が深くなる
実際にF値を変えた場合の変化はこのようになります。
このように、F値が小さい(絞りを開く)ほど被写界深度は深くなります。
背景をぼかしたい場合はF値を小さくしますが、これは被写界深度を浅くしてそれ以外の部分をボケるようにしています。
「F値」はこちらで詳しく解説しています。
F値(絞り値)とは?使い方を超初心者向けにわかりやすく解説
②ピント位置までの距離
ピントを合わせる位置までの距離によって被写界深度が変化します。
- 位置が近い → 深度が浅くなる
- 位置が遠い → 深度が深くなる
例えば30cmなどすぐ近くの位置にピントを合わせるとその前後はピントが合わずにボケやすくなります。
しかし10m先の位置にピントを合わせると、その周囲は広くピントが合います。
③レンズの焦点距離
レンズの焦点距離には広角~望遠まであり、被写界深度に影響します。
- 焦点距離が長い(望遠) → 深度が浅くなる
- 焦点距離が短い(広角) → 深度が深くなる
焦点距離が長い望遠で撮ると、ピントが合う範囲が浅くなりその前後はボケやすくなります。
焦点距離が短い広角で撮ると、ピントが合う範囲が深くなります。
「焦点距離・画角」はこちらで詳しく解説しています。
レンズの焦点距離・画角をわかりやすく解説
被写界深度の特徴まとめ
それぞれの項目をまとめると、このようになります。
被写界深度 浅い | 被写界深度 深い | |
---|---|---|
F値(絞り値) | 小さい(絞りを開く) | 大きい(絞りを絞る) |
ピント位置までの距離 | 近い | 遠い |
レンズの焦点距離 | 長い(望遠) | 短い(広角) |
ノーノちゃん
コヤくん
3. 被写界深度のパターン
F値・焦点距離・ピント位置までの距離によって、被写界深度が変わるパターンをイラストでご紹介します。
ここでは焦点距離を28mm・35mm・50mm・85mmの4種類に分け、それぞれピントの位置を変えた例になります。
F値はF2.8とF8の場合を想定し、2種類の被写界深度を表示しています。
- 表示の被写界深度は被写界深度計算アプリ「Hyper Focal Pro」(Android用)を用いた数値になります。
- フルサイズ機を使用した場合の数値になります。
焦点距離28mm
一般的な広角となる焦点距離28mmでの被写界深度になります。
広角なので50mmなどより長い焦点距離よりも被写界深度は深くなります。
ピント位置1m
広角28mmで被写体に接近したイメージです。被写界深度が深い28mmですが、近い距離の撮影では浅くなります。
F2.8とF8のどちらも被写界深度が浅く、背景をぼかすことができます。(ただF8ではボケ具合は弱くなります)
ピント位置3m
3m離れると被写界深度は深くなりますが、F2.8だとまだ背景はボケやすくなります。
人物の記念撮影で背景も写したい場合は、F8など大きく絞って撮影します。
もしAPS-C機で18mm(35mm換算で28mm)でこの3mの位置を撮影する場合、F8に絞ると被写界深度は「1.26m~無限遠∞」になります。
フルサイズと被写体を同じ大きさで写す場合、APS-Cは焦点距離が短くなるため、被写界深度は深くなります。
ピント位置5m
5m先にピントを合わせると、F8でパンフォーカスになります。
このように28mmはF8に絞って少し離れた場所にフォーカスを合わせると、自動的に広い範囲にピントが合うようになります。
ピント位置10m
10m先にピントを合わせると、F2.8でもF8でもパンフォーカスになります。
F8に絞った方が、2.55m先から被写界深度となるのでより手前から広くピントを合わせることができます。
焦点距離35mm
広角寄りの標準画角となる、35mmになります。
風景撮影やスナップで使いやすい焦点距離になります。
ピント位置1m
1mの位置にピントを合わせると被写界深度は浅くなります。
例えば子供を近い距離で35mmで撮影する場合、F2.8など小さいF値では背景を大きくぼかすことができます。
ピント位置3m
3mの位置でF8に絞ると、被写界深度は少し深くなります。
ただF8でも約7m先までしかピントが合わないので、後方の風景もシャープに写したい場合はさらに絞る必要があります。
APS-Cで被写体をフルサイズと同じ大きさに写す場合、23mm(換算35mm)で撮影することになります。その場合はF8で「1.62m~19.56m」までが被写界深度になります。
ピント位置5m
35mmで近距離の風景を撮る場合は、F8に絞ると約75mの遠方まで被写界深度になります。
ピント位置10m
F8で10m先にピントを合わせると、被写界深度は伸びてパンフォーカスとなります。
焦点距離50mm
焦点距離50mmは見た目に近い標準画角と言われ、風景やテーブルフォト、ポートレートまで幅広く使われています。
ピント位置1m
広角に比べて、50mmでは1mの近距離撮影はさらに被写界深度が浅くなります。F2.8の場合で6cmとなっています。
そのためボケを表現しやすくなりますが、ただテーブルフォトで広くピントを合わせたい場合などは、かなり絞り込む必要があります。
ピント位置3m
3mの距離はF2.8だと被写界深度は60cm程度となり、ポートレートでは適度にボケる撮影ができます。
F8に絞っても被写界深度は深くないので、広くピントを合わせたい場合はさらに絞るか、ピント位置を3m以上の遠くにする必要があります。
APS-Cで33mm(換算50mm)の場合はF2.8でも「2.62m~3.51m」と90cm程度の被写界深度となり、ボケは弱くなります。
ピント位置5m
ピント位置を5mまで離すと、F8の被写界深度がある程度深くなります。
ピント位置10m
ピント位置が10m先で、F8に絞ると被写界深度はかなり深くなります。15m先だと無限遠までのパンフォーカスとなります。
焦点距離85mm
85mmは中望遠になり、花の撮影など少し離れた被写体の撮影に適してします。
またポートレートでは定番の焦点距離になっています。
ピント位置1m
1mの距離でF2.8の場合は非常に薄い2cm程度の被写界深度となり、ピント合わせが難しくなります。
F8でも被写界深度は浅くなります。
ピント位置3m
3mほど離れても被写界深度は浅くなります。
ポートレートでは85mmで3m離れると、人物の上半身を構図に入れることができます。
ピント位置5m
5mほど離れても、被写界深度は浅くなります。望遠になるほど遠くまでピントを合わせるのが難しくなります。
ポートレートでは85mmで4~5m離れると、全身を写すことができます。
ピント位置10m
少し離れた風景を望遠で切り取る撮影になります。
10m先ではパンフォーカスになりませんが、もしF8で30mほど先にピントを合わせるとパンフォーカスが得られるようになります。
4. まとめ
被写界深度は写真のピントに関わる重要な知識になります。
ふだんの撮影で被写界深度がイメージできるようになると、写真の表現が広がります。
F値・ピントまでの距離・焦点距離を意識して撮影を楽しんでくださいね。
- F値が小さいほど被写界深度は浅くなる
- 焦点距離が長いほど被写界深度は浅くなる
- ピント位置が近いほど被写界深度は浅くなる
被写界深度を理解するには以下の用語も必要になります。
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