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レンズの収差や回折現象とは?画質低下の原因を解説

レンズ収差・回折現象イメージ

このページでは、レンズの画質変化についてまとめています。

設定するF値(絞り値)によっては、「収差」や「回折現象」が発生して写真の画質が低下することになります。

画質低下の原因を知ることで、レンズの特性が理解できたり、撮影時にベストなF値で写せるようになります。

ノーノちゃん

同じレンズなのに、そんなに画質が変わるの?
はい。専門用語なので難しいですが、綺麗に撮りたい方には重要ですね。

コヤくん

1. F値ごとの画質変化

写真の解像感は、F値の設定値によって変化します。

よく風景撮影では少し絞るのがよいと言われていますが、これは絞ることでレンズの解像力が向上することが理由になっています。

下の図は、ある50mm単焦点レンズの解像力を表したグラフになります。

F値画質グラフ

棒グラフが高いほど、解像力が高いことを表しています。また写真の中央部と周辺・四隅で解像力は違っています。

このレンズの場合は開放F値では解像度が低く、F4~F5.6に絞ると解像度が高くなっています。

一部では開放F値から解像力の高いレンズもありますが、多くのレンズはこのように開放では甘く、絞ると画質が良くなる特徴があります。

「F値」についてはこちらで詳しく解説しています。
F値(絞り値)とは?使い方を超初心者向けにわかりやすく解説F値(絞り値)とは?使い方を超初心者向けにわかりやすく解説

ノーノちゃん

じゃあ、いつもF5.6くらいで撮るのがよいの?
いえ、ボケ味を出したい場合はF値を小さくして大丈夫ですよ。
次は、画質低下の現象をご紹介していきます。

コヤくん

2. 画質低下の現象(F1.4~F2.8)

F1.4~F2.8などの開放F値では、レンズの広い範囲から光を取り込むことになります。しかし同時に画質の悪い光も入るデメリットがあります。

ズームレンズはレンズにより開放F値がF3.5やF4になることもありますが、同じく画質低下が起きやすくなります。

F8と開放F値でカメラに入る光はこのような違いがあります。

F値の画質変化-開放F値

F8では適度に絞ることで、レンズ中央を通る画質のよい光を主に取り入れることができます。

しかし開放F値ではレンズの中心から離れた画質の悪い光も取り込むため、写真の画質低下が起きやすくなります。

以下は開放F値付近で発生する、画質低下の現象についてご紹介します。

像面湾曲

像面湾曲

像面湾曲(ぞうめんわんきょく)は中央部にピントを合わせた時、周辺部のピント位置がズレてぼやける収差になります。

一般的に「周辺部の画質が悪い」と言われるのはこの像面湾曲による画質低下になります。

単焦点レンズでも像面湾曲は発生しますが、一般的にはズームレンズの方が大きくなります。またレンズの品質によっても像面湾曲の影響は変わってきます。

像面湾曲は絞ることで軽減できます。

歪曲収差

像が平面ではなく、樽型や糸巻き型に歪曲する現象を歪曲収差(わいきょくしゅうさ)といいます。

歪曲収差

一般的に歪曲収差は、小型レンズやズームレンズの広角側で発生しやすくなります。

近年では歪曲収差のあるレンズでも、ボディ側のレンズ補正が働いて整えられるようになっています。

(JPEGでは補正されて歪曲収差に気づかない場合でも、RAWで現像ソフトに取り込むと歪曲収差が出ることがあります。)

歪曲収差は絞りの影響は受けないため、絞っても解消できません。

補足
歪曲収差は画像編集ソフトで補正することができます。例えばLightroomの場合は「レンズ補正」項目で処理を行うことができます。

球面収差

球面収差(きゅうめんしゅうさ)は、レンズ中心の光と周辺部の光が同じ位置に結像しない収差になります。写真中央部~周辺部の像がにじみ、解像度が低下します。

ソフトフォーカス的な効果が出るため、古いレンズでは意図的に開放付近で球面収差が残されることもありました。またポートレート撮影ではソフトな描写は好まれます。

近年のレンズは非球面レンズを使うことで球面収差を抑え、開放からシャープに描写するレンズが増えています。

球面収差は絞ることで軽減できます。

コマ収差

コマ収差

コマ収差はレンズに斜めから入った光が中心の光と結像しない収差のことで、写真周辺部の像が乱れます。

コマ収差が発生すると、星景写真や夜景写真で点光源が縦に伸びたり三角に変形します。

コマ収差は大口径レンズの開放付近で発生しやすくなります。また古い設計のレンズでもコマ収差は発生しやすくなります。

コマ収差は絞ることで軽減できます。

非点収差

非点収差(ひてんしゅうさ)は画面周辺が楕円形に伸びて流れるような現象をいいます。

非点収差
写真によっては「ぐるぐるボケ」とも呼ばれる渦を巻いたような描写になります。

この現象が大きく発生するかの度合いはレンズによって異なりますが、基本的に大口径レンズの開放で発生しやすくなります。

非点収差は絞ることで軽減できます。ただ開放で撮りたい場合は防ぐのは難しくなります。

周辺減光

周辺減光
写真の四隅が暗くなる現象で、周辺光量落ちともいいます。
周辺減光
絞ることで四隅の暗さは改善できます。

周辺減光は空やシンプルなカラーの壁を撮影すると確認しやすくなります。

周辺減光の度合いはレンズによって異なりますが、基本的にF値が小さく明るいレンズほど発生しやすくなります。また広角レンズでも発生しやすくなります。

周辺減光は絞ることで軽減することができます。

補足
周辺減光は画像編集ソフトで補正することができます。例えばLightroomの場合は「レンズ補正」項目で処理を行うことができます。

色収差

色収差

古いレンズで撮影した写真です。写真周辺部の建物の輪郭に赤と緑の色収差が出ています。

色収差は光の色ごとに波長が異なり、それぞれがズレて結像することで色のにじみが発生する収差になります。

カメラを空に向けて木を撮影した時、葉や枝の周囲の縁が紫色になるパープルフリンジも色収差の一種になります。パープルフリンジは輝度差のある状況で発生します。

色収差にはレンズ性能が原因の「倍率色収差」と、絞りの影響がある「軸上色収差」があります。いずれもレンズの品質によって発生量には違いがあります。

「倍率色収差」は絞っても改善しませんが「軸上色収差」は絞ることで軽減できます。

補足
色収差は画像編集ソフトで補正する方法もあり、例えばLightroomの場合は「レンズ補正」項目で軽減できます。

ノーノちゃん

開放だと画質はデメリットが多いだね。
そうですね。ただ開放は大きくボケたり、シャッタースピードが速くなるメリットがあるので上手く使うことがポイントになります。

コヤくん

3. 画質低下の現象(F11~)

大きく絞ると被写界深度が深くなり、遠くまでピントが合う範囲が広くなります。

しかしF11以上に大きく絞ると、次のような画質低下が発生します。

回折現象

F値を大きくすると回折現象(かいせつげんしょう)が発生します。

大きく絞って光の通る穴が小さくなると、光の進行方向が変化してぼやけた光(回折光)がイメージセンサーに当たることになります。

光がぼやけることで焦点が合わなくなり、画質が低下してしまいます。

F値の画質変化-回折現象

回折現象はF8などでも発生しますが、回折する光の割合は少ないため画質への影響は小さくなります。

F22まで絞った写真は、F5.6の写真より画質低下が起きています。

F値の画質変化-回折現象

回折現象はイメージセンサーの大きさも関係しています。センサーが小さいマイクロフォーサーズ機の場合、レンズによってはF8でも回折現象が発生することがあります。

回折現象がどのF値で発生するかは、実際に手持ちのレンズでF値を変えて画質比較をすることで把握できます。

ノーノちゃん

画質が悪くなるから、あまり大きく絞らない方がいいね。
はい。ただ流し撮りをする場合はF値が大きくなるので、その場合の画質低下はしかたないですね。

コヤくん

4. 画質低下についてのまとめ

レンズの画質低下は、様々な現象によって発生します。

多くは絞ることで回避できますが、背景をぼかしたりシャッタースピードを稼ぎたい場合などは絞りを開いて撮影しないといけません。

使用するレンズはどのようなF値で画質低下が起きるのか、把握しておくとベストなF値で撮影できるようになりますよ。

まとめ
  • 像面湾曲は四隅の画質低下
  • 周辺減光は開放で起こりやすい
  • 色収差は物の周囲がにじむ
  • 球面収差があるとソフトな画質
  • 星景撮影ではコマ収差は防ぎたい
  • 絞り過ぎると回折現象が起きる

収差や回折現象を知るには、F値を理解しておくことも重要になります。
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F値の計算方法や求め方はこちらで解説しています。
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