「測光モード」はカメラの基本操作ですが、用語がわかりにくく難しい操作になっています。
そこで、このページでは図を用いて測光モードの特徴や用語解説をしています。
特に使い分けが難しい中央重点測光とスポット測光の違いも説明しているので、初心者の方はチェックしてくださいね。
ノーノちゃん
コヤくん
このページの目次
1. 測光モードとは?
測光モードとは、「光を測る」と書くようにカメラが明るさを判断する方法になります。
具体的に言うと、カメラを向けた構図の中で、どの部分を基準にして明るさを判断させるかという意味になります。
大きく分けると3つの方法があります。
構図の全体を測光するか、中央を測光するか、一部分を測光するかの3種類があります。
どの測光モードを選択するかで、写真の明るさが変わってきます。
ノーノちゃん
コヤくん
操作方法
測光モードの操作方法は機種によります。
測光モードボタンから上面のサブ液晶で選択する場合と、メニュー画面から選択する方法があります。
- キヤノン「評価測光」
- ニコン「マルチパターン測光」
- ソニー「マルチ測光」
- オリンパス「デジタルESP測光」
測光+露出補正で考える
測光モードは露出(明るさ)を合わせる機能ですが、測光選択だけで最適な明るさにならないこともあります。
ふだん多くの方が使用している多分割測光でも露出補正を行うように、カメラの自動露出は最適でないことがあります。
また撮影者の好みで「この場面は見た目より明るくしたい」というイメージに合わせた明るさにしたいケースもあります。
そのため、基本は「測光モード+露出補正」という考え方で露出合わせをするのがベストです。
「露出補正」はこちらで詳しく解説しています。
【露出補正の使い方】初心者でも失敗しないコツをご紹介
ノーノちゃん
次は各測光モードを具体的にご紹介していきます。
コヤくん
2. 多分割測光
「多分割測光」は構図全体を測定して最適な明るさにするため、多くの場面でバランスのよい露出(明るさ)になる特徴があります。
これ以外のモードは使い方に経験が必要なため、初心者の方はこの「多分割測光」で撮影することをおすすめします。
明暗差が大きい場面は注意
「多分割測光」は明暗差が大きい場面では明るさが狂いやすくなります。
よくあるケースとしてはこのような場面があります。
- 逆光で人物が暗くなる:
カメラは太陽の明るい光を基準にするため、写真を暗くすることが原因です。 - 舞台撮影で舞台上の人物が白飛びする:
カメラは照明が当たらない暗い場所を基準にするため、写真を明るくすることが原因です。
「多分割測光」が苦手なのは明暗差がある場面で、カメラが被写体以外の明るさも測定していることが原因です。
この場合は露出補正を調整して対応します。状況によりますが、明暗差が大きいほど露出補正値も大きく動かす必要があります。
ノーノちゃん
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3. 中央重点測光
「中央重点測光」は画面中央に重点を置いて、全体を平均的に測光します。
構図の中央付近に合わせて明るさを決めるため、その範囲に合う大きさの被写体が適しています。
常に画面の中央を測光するため、もし被写体を構図の右側などにずらして写したい場合は、一度中央で被写体をAEロックしてから構図を変える必要があります。
慣れが必要なモード
「中央重点測光」は重視する測光範囲がわかりくく、扱いには経験が必要になります。
例えば被写体の背後が明るいと、その背景の明るさも測光するため人物が暗く写ってしまいます。
特に明暗差のある場面で使うのは経験が必要になります。
ノーノちゃん
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4. スポット測光
「スポット測光」は一部分だけを測光するので、被写体と周囲の明るさが異なる場面で効果を発揮します。
例えば舞台・ステージの撮影や結婚式の新郎新婦入場、子供の演劇撮影など、周囲が暗く人物にライトが当たっているような、極端に明暗差が大きい場面で活用します。
もし明暗差が激しい舞台撮影で「多分割測光」を使うと、露出オーバーとなり被写体が白飛びしてしまいます。
しかし「スポット測光」ならピンポイントで人物を測光して適正な明るさで写してくれます。
露出補正で調整することも
「スポット測光」はピンポイントで測光するので精度が高いように思いますが、被写体の色によって適正な明るさにならないことがあります。
グレーや緑・青色、人物の肌色などは比較的適正に写りますが、黒い被写体だと露出オーバー(明るく写る)となり、白い被写体は露出アンダー(暗く写る)で写ります。
これはスポット測光に限った現象ではなくカメラの特性になります。多分割測光でも、例えば白い壁を構図一杯に写す場合は暗く写ります。
このように、スポット測光でも被写体の色によっては露出補正を調整しながら希望の明るさに合わせます。
一部の機種は測距点非連動
キヤノン機のEOS RやEOS 5D markIV、ソニーのα7IIなどは、スポット測光の範囲がAFポイントの測距点と連動せずに中央限定となっています。
そのため、例えば被写体を構図の左側に置いてフォーカスポイントを左に動かしても、測光は画面中央で行われるので正しい明るさになりません。
※スポット測光の赤色はイメージです。
この場合は一度画面中央で被写体を合わせてからAEロックを行い、構図を調整する撮影方法になります。
このような非連動の機種以外では、スポット測光位置をAFポイントと連動するかを選択できる機種が多いので、その場合は好みで設定します。
ノーノちゃん
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5. 測光モードの実例比較
ここでは3種類の測光モードを使うと実際にどう写るのか、撮り比べをしてみました。
周囲の明るさによって変化が大きくなったり、あまり変わらない場面もありました。
明暗差がないシーン
まずは露出が難しくない、被写体と周囲の明るさに明暗差がないシーンになります。
被写体としてぬいぐるみを置き、スポット測光でもぬいぐるみに合わせています。
多分割測光
明るさは適正で、見た目の印象に感じます。
中央重点測光
中央重点測光も多分割測光と全く同じ1/200秒の撮影データとなり、こちらも明るさは見た目の印象になっています。
スポット測光
スポット測光のみ少し暗めになりました。測光位置が白色のためカメラが暗く補正したと思われます。
並べて比較するとこのようになります。
明暗差が大きなシーン1
次は明暗差が大きい逆光での作例になります。逆光のために人物を写すのが難しいケースは実際によくあると思います。
同じく、ぬいぐるみにピントと測光位置を合わせています。
多分割測光
カメラは背景の明るい部分を暗く補正するため、その影響で被写体も暗く写っています。逆光撮影でよくある失敗例になります。
ミラーレスであれば電子ビューファインダーや液晶画面を見ながら露出補正を大きくプラスにして被写体を明るくすることができます。
ただ一眼レフの光学ファインダーの場合はプラス幅を考えるのは難しく、適正な露出になるまで何度も取り直すことがあります。
中央重点測光
中央付近を重点的に測光するため、カメラは中央の明るい部分を暗く補正してしまい、その結果被写体が暗く写っています。
このように中央重点測光では構図中央に明るい部分があると、多分割測光よりもアンダーになる傾向があります。
スポット測光
スポット測光では一部のみを測光するため、周囲の明るさに影響されず被写体を適正な明るさで写しています。
被写体を明るく写るよう補正したために、周囲は露出オーバーとなり白飛びが多くなっています。
並べると逆光の場合は測光モードの差が最も大きく現れます。
明暗差が大きなシーン2
次は暗い場所で被写体にライトが当たる場面での作例になります。
建物2階にあるウェディングドレスを被写体としています。真っ白な被写体であるためカメラにとっては難しい場面になります。
多分割測光
周囲の暗い場所を明るく調整するため、被写体が白飛びしています。建物の室内も明るく写り過ぎています。
中央重点測光
建物が中央重点測光が重視する範囲にちょうど当てはまる構図になります。
全体の明るさが見た目に近く、白飛びが少なくなっています。
スポット測光
さらにアンダーとなり、被写体の白飛びが減っています。被写体の露出を重視する場合に適しています。
暗い状況でライトが当たった被写体を撮影した場合は、スポット測光のように測光範囲が狭いモードほど、暗く写る結果になりました。
6. その他の測光モード
上記の基本測光モード以外に、メーカーや機種独自の測光モードもあります。
ハイライト重点測光など撮影が楽になる便利な測光モードも登場しています。
ハイライト重点測光
「ハイライト重点測光」は画面の最も明るい部分を自動で測り、白飛びを防ぐ測光モードになります。
スポット測光と比較すると、さらにアンダーで写ることが多くなります。
画面全ての白飛びを防ぐ露出になるため、全体が暗く写り過ぎてしまうことがあります。この場合は画像編集ソフトで明るさを調整して対応します。
ただ「ハイライト重点測光」は撮影者が明るい部分に測光を合わせる手間がなく、カメラが自動で行ってくれるので撮影が楽になります。
- ソニーα7III、α7RIV、α6500など
- ニコンZ7、Z6、D850、D7500など
- パナソニックS1R、S1H
画面全体平均 / アベレージ
「画面全体平均/アベレージ」は画面全体の明るさを平均するので、構図や被写体の位置で明るさが変わりにくい特徴があります。
明暗差のある場面では明るい部分の白とびを抑えた露出になります。
その反面、逆光の人物撮影では人物が暗く写ってしまうので適していません。
- ソニーα7III、α7RIV、α6500など
- 富士フイルムX-H1、X-Pro2、X-T30など
部分測光
「部分測光」は画面中央の一部分を測光するモードで、スポット測光よりも少し測光範囲が広くなります。キヤノン独自の測光モードです。
逆光など被写体の周囲に強い光がある場面で明るさを合わせやすくなります。
ただ中央のみで測光するため、一度被写体を中央でAEロックしてから構図を整える撮影方法になります。
- キヤノン機
ノーノちゃん
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7. 露出合わせはミラーレスが便利
露出の合わせ方は一眼レフとミラーレスで大きく異なります。
昔からカメラを使っている方はご存知だと思いますが、初心者の方向けにそれぞれの違いをご紹介します。
一眼レフ
一眼レフの光学ファインダー(OVF)はガラス越しに景色が見える仕組みなので、測光モードや露出補正の効果がファインダーでは確認できません。
露出を合わせるには、シャッターを切る前に測光モードや露出補正を操作して写真の明るさを予測する必要があります。
このため一眼レフでは多くの機種でシャッターボタンの近くに測光ボタンが配置され、重要な操作ボタンとなっています。
一眼レフは撮影後に画像の明るさを確認するので、もし明るさが違う場合は露出補正を操作して再度撮影を行います。
ミラーレス
ミラーレスは電子ビューファインダー(EVF)方式となっています。
そのため、シャッターを切る前に測光モードや露出補正の効果が反映され、ファインダーまたは背面液晶モニターで明るさを確認することができます。
(設定によりシャッター半押しで測光が開始されます。)
このようにミラーレスは撮影前に明るさが確認できるので、一眼レフの光学ファインダーより楽に撮影ができます。
ノーノちゃん
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8. 測光モードのまとめ
測光モードは多分割測光以外を扱うには慣れが必要です。
カメラの使い初めは多分割測光で撮影するのが無難で、またミラーレスなら明るさを確認しながら露出補正で対応するのがおすすめです。
シーンによってはスポット測光などが便利なこともあるので、少しずつ試しながらレベルアップしてみましょう。
- 多分割測光は様々な場面で使える測光モード
- 多分割測光は明暗差が激しい場面では注意
- 中央重点測光を使いこなすには経験が必要
- 舞台撮影など周囲が暗い場所はスポット測光が便利
- ハイライト重点測光は自動で白飛びを防ぐ測光モード
- ミラーレスは撮影前に明るさが確認できる
写真の明るさに関する記事はこちらでもご紹介しています。
【露出補正の使い方】初心者でも失敗しないコツをご紹介
カメラの露出とは?写真の明るさを表す基本用語