ニコン初のAPS-Cミラーレス機「Z50」が発売されました。
ソニーやキヤノンからも人気のAPS-Cミラーレスがありますが、Z50はそのライバル機と比べてどのようなモデルなのか、違いをまとめてみました。
またニコンプラザ大阪の展示機を触ってきたので、その感想も書いています。
ノーノちゃん
コヤくん
このページの目次
1. ボディ外観
フルサイズのZ7、他社のAPS-C機とのサイズ比較はこのようになっています。
Z50のボディサイズはコンパクトで、一見するとEOS Kiss Mに似た印象です。
小型なのに深いグリップ、そして大きな電子ビューファインダーが特徴となっています。
ノーノちゃん
コヤくん
2. キットレンズ
Z50のキットレンズとして、標準ズームレンズと望遠ズームレンズが同時発表されました。
NIKKOR Z DX 16-50mm f3.5-6.3 VR
沈胴式レンズですが、スイッチ解除式ではないのでズームリングを回すだけで素早く使い始めることができます。見た目は非常に薄くパンケーキレンズのようです。
手ブレ補正は4.5段なので高い補正効果が期待できそうです。
またコントロールリングも用意されていて、MF切り替えやISO感度など機能を割り当てることができます。
NIKKOR Z DX 50-250mm f4.5-6.3 VR
望遠ズームレンズも沈胴式タイプとなっていて、使用時に繰り出し操作を行います。
手ブレ補正は「NIKKOR」レンズ史上最高の5段と高い補正効果があり、コントロールリングも備えています。
焦点距離250mm(換算375mm)までをカバーするので、一般的なキットレンズの望遠レンズに比べるとやや大柄サイズになっています。
この焦点距離であれば対応シーンが広がり、より本格的な撮影ができそうです。
ノーノちゃん
コヤくん
3. Z50の特徴
ここからはZ50がどんなカメラなのか、他社のミラーレスとも比べながら特徴をまとめています。
綺麗なファインダーや操作性など、ニコンこだわりの仕様がわかりました。
ダイヤル・ボタン配置
ニコン一眼レフのエントリー機にはなかった、前ダイヤルが備わっています。ダイヤルが前後に2つあることで操作性がとても良くなっています。
ボタンの配置は一眼レフやZ7・6と似ているので、ニコンユーザーは移行しやすいと思います。
右側のみに操作ボタンを配置してあるので、右手で完結できる操作性になっている点も特徴です。
またボディ前面にファンクションボタンが2つ配置されていて、カスタム性を確保してあります。
小型化のためかレリーズモード(連写)ボタンはなくなっていてiメニュー操作になるので、連写をよく使う人はファンクションに割当てると便利そうです。
タッチボタン
液晶モニターの右側がタッチボタンになっていることも特徴です。
ここに並ぶ拡大・縮小、DISPボタンはタッチ操作なので操作が少し不安でした。
実機を触ってみると、違和感はありますがファインダーを覗いたままでも問題なく操作ができました。
拡大・縮小ボタンが離れているので、位置を間違えずにタッチできるように思います。
操作性
小型ミラーレスはグリップが浅い機種が多いですが、Z50は深いグリップを備えていてホールドしやすく好印象です。
ただ小指は余ってしまい、そのためか前ダイヤルの操作が他のニコン機に比べて若干操作しにくいように感じました。この点は慣れの問題かもしれません。
iメニュー画面の項目は順番を入れ替えたり、別の項目を追加することができるので、よく使う機能に素早くアクセスできます。
またiメニューで項目を合わせた際、OKボタンを押さなくてもダイヤルを回すと設定が直接変更でき、スピーディに変更できます。
電子ビューファインダー
電子ビューファインダーの解像度は236万画素と標準的なスペックとなっています。
しかし、実機のファインダーはクリアな視界で、映像だと感じない綺麗さでした。この点は他社のミラーレスに差をつけていると思います。
ファインダー像は0.39型の大きさで、D7500など一眼レフ中級機よりやや広いファインダー像となっています。
Z6・Z7の非常に広い0.5型はさすがにグレードが違いますが、小型機としては大満足のファインダーでした。
画像処理エンジン
画像処理エンジンは最新のEXPEED 6が採用され、高感度画質の向上が期待できます。
またEXPEED 6によって絞った際の回折現象の画質低下を補正する機能も装備されました。
ハイブリッドAF
ニコン初となるAPS-Cの像面位相差AFと、コントラストAFを切り替えて使用するオートフォーカス方式となっています。
ミラーレスですが動く被写体を追従する性能も期待できます。
また測距点は209点で、撮像範囲の縦横約90%をカバーできるので広い範囲でピント合わせができます。
高速連写
連写性能はAF/AE追従で最大約11コマ/秒となり、ハイスペックな連写機能が備わっています。
連写は11コマ/秒は画像がコマ送りとなるアフタービュー方式ですが、連写が速いので映像も遅れずに次々と表示され、鉄道など動く被写体でも撮りやすそうに感じました。
5コマ/秒を選択すると、一眼レフのようなシャッター幕が動く連写となります。
カメラ雑誌のテストではZ6の追従性能が高かったので、Z50の追従性能も気になるところです。
瞳AF
※動画は再生音が鳴ります。
Z7・6で採用されている瞳AFがZ50でも使用できます(静止画のみ)。
ポスターの顔写真があったので試してみました。AFエリアを「オートエリアAF」に設定すると自動で瞳に黄色に枠が表示されました。
ニコンの瞳AFが便利なのは、瞳に表示される枠に矢印が付いていて、左右の瞳を画面を見ながら簡単に切り替えができることです。
ポートレートで正面に近い角度の場合、カメラは左右どちらの目が手前なのか判断できないことがあるので、違った場合でもすぐに左右を切り替えできます。
瞳を追う反応速度はとても速いですが、最新のソニー機と比較するとわずかに遅い気もします。ただこの反応速度であれば問題なく使えると思います。
シャッター音
Z50のシャッター音は小型ミラーレスにありがちな軽い音ではなく、絞り羽根がガシャっと動く一眼レフらしい音になっています。
シャッター音は好みで分かれるものですが、筆者としては好みで、ついシャッターを切りたくなるような音でした。
Z7・Z6ほどの控えめなシャッター音量ではありませんが、Z50も比較的静かなシャッター音に感じます。
こちらのyoutubeでZ50のシャッター音が公開されています。
フリッカー低減
Z50はフリッカー低減機能が利用できます。
フリッカー現象は、室内の蛍光灯下でシャッターを切った際に、目に見えない照明の点滅で画像が暗く変色する現象をいいます。
フリッカー低減機能は、カメラが暗くなるタイミングをずらしてシャッターを切ってくれる機能になります。
近年ユーザーの要望が多くなっているフリッカー低減を搭載しているのは歓迎されると思います。
サイレント撮影
サイレント撮影は舞台や演奏会など静かに撮影したい状況で、とても役立つ機能になります。
シャッター音を嫌がる子供やペットの撮影にも便利です。
サイレント撮影の設定はメニュー内にありますが、iメニュー内にカスタマイズで入れることができるので、簡単に切り替えできるようになっています。
ローライトAF
暗い環境でピントが合いやすくなるローライトAFが選択できます。
-4EVの低輝度に対応できるので、かなり暗い場所でもオートフォーカスが働きます。
他社ではキヤノンのEOS M6 mkIIが-5EVとなりましたが、多くの機種は中級機でも-2~-3EV程度なので、Z50は高い暗所AF性能になります。
画像仕上がり設定
画像出典:ニコン公式サイト
画質の仕上がりを変えるCreative Picture Control機能が搭載されました。
このような機能は各社で採用されていますが、Z50では20種類も選択肢があり、様々なイメージに写真を加工することができます。
また通常は加工の種類を選択するだけですが、その効果の度合いを10段階で決めることができるので、効果が強過ぎる場合は適度に調整することも可能です。
自分撮りモード
画像出典:ニコン公式サイト
液晶モニターを下へ180°開くと「自分撮りモード」になり、タッチでセルフタイマーのシャッターを切ることができます。
またこのとき、動画撮影ボタン以外は誤作動防止のためロックがかかる仕様になっています。
ただジンバルに載せて歩きながら撮影する場合は、液晶モニターが見えなくなります。歩き撮りをするユーザーにはバリアングルの方がよかったかもしれません。
USB充電
バッテリーが新しいEN-EL25になったことで、USB端子からの本体充電に対応しました。
別売のACアダプターEH-73Pを経由して、充電することができます。
(電源OFF時のみ充電可)
動画性能
4K30p(クロップなし)の撮影に対応し、電子手ブレ補正も使用できます。
※電子手ブレ補正使用時は画角が若干狭くなります。
動画時はフォーカスモードを「AF-F」に設定することで、被写体を追従させることができます。
追記)以前「動画専用のAF-C」と記載していましたが、正しくは「AF-F」モードになりますので訂正しました。
またCreative Picture Controlは動画撮影時も選択でき、映像の色合いを細かく調整することができます。
タイムラプス
設定した撮影間隔で自動的に撮影を行い、撮影した静止画をつないで動画として記録できます。空の雲が早送りで動くような映像を作ることができます。
4K以上の高解像度で作成でき、ムービーで遊びたいユーザーに面白い機能となっています。
スローモーション動画
4倍スロー再生ができる、フルHDのスローモーション撮影に対応しています。
スローモーション動画も近年人気の機能なので、Z50にも搭載されました。
マウントアダプター対応
マウントアダプターFTZ(別売)を使うと、Fマウントレンズを装着することができます。
一眼レフで使っていたレンズ群も、Z50でも無駄なく活用することができます。瞳AFも動作するので安心です。
ワイヤレスリモコン
Z50はレリーズケーブルには非対応ですが、bluetoothリモコンの「ML-L7」に対応しています。
ML-L7はシャッターボタンだけでなく録画ボタンや十字キー、拡大・縮小まで可能なマルチリモコンとなっています。
bluetoothタイプなのでどの方向からでもリモコンが効くので、赤外線リモコンよりも使い勝手はよさそうです。
ノーノちゃん
ただ気になる点もあるので、次にご紹介します。
コヤくん
4. 不満点
実機を触って好印象のZ50でしたが、もう少し期待していた部分もあります。
ニコンユーザーの方や初めて一眼カメラを使う人にも共通することと思われるので、それらをまとめてみました。
ボディ内手ブレ補正なし
Z50はボディ内手ブレ補正がなく、レンズ側での手ブレ補正を使うことになります。
キットレンズであれば強い手ブレ補正がついているので、キットレンズで撮影する場合は問題ないでしょう。
FTZマウントアダプター経由でFマウントレンズを使う場合は一眼レフと同様の使い方になりますが、どのレンズでも手ブレ補正が使えるようになったら、という期待はあったと思います。
また現在Z7・Z6をお使いの方は手ブレ補正のないZレンズをZ50につけることになりますし、各社のライバル機と比較するとボディ内手ブレ補正があればよかったと感じます。
レンズ群
まだ始まったばかりのDX向けZマウントシステムなので、今回は2本のキットレンズのみになります。
ロードマップによるとDX用レンズは18-140mmの高倍率ズームレンズが登場するようですが、他のレンズは計画にないようです。
交換レンズを楽しむにはFTZマウントアダプター経由でFマウントレンズを使うか、高価なフルサイズ用Zレンズを使うことになります。
DX用の単焦点Zレンズなどが登場して欲しかったのですが、まだ現状では難しいようです。
レリーズケーブル
Z50はレリーズ端子が省かれています。そのため一眼レフの各モデルで使えていたレリーズケーブルMC-DC2を使うことができなくなっています。
Z50で遠隔操作をする方法としては、スマホアプリの「SnapBridge」でスマートフォンから操作するか、bluetoothリモコンのML-L7を使うことになります。
Z7・Z6はレリーズ端子があるので、残念ですがZ50はスペースの問題で省かれたのかもしれません。
バッテリー
Z50のバッテリーは新開発のEN-EL25(1120mAh)になっています。
Z7・Z6のバッテリーはEN-EL15b(1900mAh)なので、そのユーザーはサブ機としてZ50を購入してもバッテリーの使い回しができなくなります。
また各社ともにコンパクトミラーレスは撮影枚数が300枚前後となっていますが、1日中撮影するには予備バッテリーが必須になっています。
ソニーのα6600は大容量バッテリーを採用し、この問題を解決しています。Z50も中級機の位置付けであれば、もう少しバッテリー容量を増やしてもらいたかったところです。
ファインダー優先機能なし
Z50はZ7/6に搭載されている、ファインダー優先機能が省かれています。
ファインダー優先機能は一眼レフのようにファインダーで撮影し、再生画像は背面液晶モニターに表示する機能です。
背面モニターで撮影される方は特に使わない機能かと思いますが、ファインダーのみで撮影したい方には便利な機能でした。
タッチパッドAFなし
Z50はタッチAFには対応していますが、ファインダーを覗きながらAF枠(フォーカスポイント)を移動させるタッチパッド機能はついていません。
Z50はジョイスティック型のサブセレクターがついていないのでAF枠は十字キーで操作しますが、タッチパッド機能があるとより素早く操作できたと思います。
5. 上手な選び方のポイント
Z50の組み合わせ販売方法と、発売開始価格をご紹介します。
一眼カメラをZ50で始めたい初心者の方は、レンズキットかダブルレンズキットがおすすめです。望遠レンズを使うかどうかで判断されるとよいでしょう。
すでにフルサイズのZマウント機をお持ちの方はボディのみという選択肢もあります。
ニコン一眼レフのレンズをZ50で活用したい方には、マウントアダプターキットがおすすめです。
- Z50ボディ
- Z50 16-50 VR レンズキット
「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」付属 - Z50 ダブルズームキット
「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」、
「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」付属 - Z50 マウントアダプターキット
6. 仕様表
Z50の仕様表になります。
※防塵防滴についてメーカー表記の変更があったため修正しました。
機種名 | Z50 |
---|---|
発売時期 | 2019年11月22日 |
マウント | ニコンZマウント |
イメージセンサー | APS-C |
画像処理エンジン | EXPEED 6 |
画素数 | 2088万画素 |
ボディ内手ブレ補正 | – |
ダスト低減 | – ※イメージダストオフデータ取得 (Capture NX-D上で補正) |
ISO感度 | ISO100~51200 ※拡張:204800 |
AF方式 | ハイブリッドAF |
フォーカスポイント | 像面位相差AF209点 ※水平約87%、垂直約85% |
瞳AF | ◯ ※ファームウェアVer2.0で動物瞳AFに対応 ※マウントアダプター FTZ経由で Fレンズも対応 |
AF測距検出範囲 (暗所AF) |
EV-2 – 19 ローライトAF時 -4EV – 19 |
シャッタースピード | 1/4000 – 30秒 バルブ、タイム |
フラッシュ同調 シャッター |
1/250秒 |
サイレント撮影 | ◯ |
電子先幕シャッター | ◯ |
高速連続撮影(拡張) | 約11コマ/秒 ※AE・AF追従可 ※RAWは9コマ/秒 |
連続撮影 | 約5コマ/秒 約1~4コマ/秒 |
連続撮影枚数 | JPEG:71枚 RAW:30枚 |
ファインダードット数 | 0.39型 236万ドット 倍率:約1.02倍(35mm換算で約0.68倍) |
背面液晶モニター | 3.2インチ 104万ドット |
タッチ操作 | ◯ |
タッチパッドAF | – |
測光範囲 | -4 – 17EV |
アクティブD-ライティング | ◯ |
多重露出 | ◯ |
HDR | ◯ |
内蔵フラッシュ | ◯ |
フリッカー低減 | ◯ |
カードスロット | シングルスロット SDXC UHS-I対応 |
防塵防滴 | – ※防塵防滴に配慮した設計 |
Wi-Fi | ◯ IEEE802.11b/g/n/a/ac |
bluetooth | ◯ |
マイク端子 | ◯ |
ヘッドホン端子 | – |
アクセサリーターミナル | – |
USB端子 | Micro B 2.0 |
HDMI端子 | ◯(Type D) |
リモートコード | – |
ワイヤレス リモコン |
ML-L7 |
バッテリー | EN-EL25 |
撮影可能枚数 (ファインダー /液晶モニター) |
280枚 /320枚 |
外形寸法(mm) | 126.5(幅) 93.5(高さ) 60(奥行) |
重さ(バッテリー、 メモリーカード含む) |
約450g |
機種名 | Z50 |
---|---|
動画記録 | 4K:3840 x 2160 (30p/25p/24p) フルHD:1920 x 1080 (120p/60p/50p/30p/25p/24p) |
音声記録形式 | LPCM AAC |
録音装置 | 内蔵ステレオマイク |
映像圧縮方式 | H.264/MPEG-4 AVC |
動画ファイル形式 | MOV、MP4 |
スローモーション撮影 | 1920 x 1080 (120p 4倍スロー再生) |
タイムラプス動画 | ◯ |
最長記録時間 | 29分59秒 |
動画撮影可能時間 | 約75分 |
動画手ブレ補正 | ◯ 電子手ブレ補正 |
7. まとめ
Z50はボディが10万円前後と価格は抑えられ、初心者から中上級機の一眼レフユーザーもサブで使えるスペックとなっています。
今求められるミラーレス機の性能はある程度カバーされたように思います。
あとは早くお手頃なDXレンズが登場することもポイントになりそうです。
- コンパクトボディに深いグリップ
- 標準ズームレンズが薄型・軽量でコンパクト
- ファインダーが非常に綺麗
- スペースがないボディで操作性を確保している
- 瞳AFは反応がよく便利
- サイレント撮影に対応
- フリッカー低減に対応
- 液晶モニターが下に開いて自撮りできる
- 4K動画は色合い調整ができる
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